既存株主に大きなダメージを与えることが一般に理解されてきた事と、証券取引所の方針により、すっかりと沈静化した
MSCBですが、また形を変えてやってきたようです。それは
「株式併合+新株予約権」です。
12/30日の asahi.com に、
ヤマシナ(5955)に関してこんな記事が流れていました。
「新株予約権で申告漏れ 利益10倍 国税指摘・追徴へ」
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大手ネジメーカー「ヤマシナ」(本社・京都市)が発行した新株予約権を利用し、投資額の10倍もの利益を上げる仕組みに投資した関東、関西、東海地方などの約15の個人、企業が東京、大阪、名古屋などの国税局の税務調査を受け、総額で約30億円の申告漏れを指摘されたことが分かった。(後略)
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この仕組みについては、いくつもの巧妙な仕掛けがあって、
- 新株予約権の発行を発表する段階では大規模な有利発行には見えない
(過去6ヶ月の平均株価24.49円に対して、22円で発行)
- 株式併合を行うが、その名目は「発行済株式総数の適正化と株式取扱事務費用の削減」としていて、反対する理由がない。
- 株式を併合しても、新株予約権の行使価格を「調整しない」。
この「3」が最も重要なカラクリです。
新株予約権のリリース文には「行使価額の調整」の項に「
行使価額は、株式の分割もしくは株式の併合の場合、時価を下回る払込価額で自己株式を処分する場合、株式に転換できる証券の発行が行われる場合などにも調整される。」と記載がります。
しかしながら、調整方法の規定が明記されておらず(時価を下回る払込金額で新株式を発行する場合は明記されています)、
実際には調整されなかったようです。
つまりは、はた目から見れば
「22円で発行し、株式併合時にはきちんと行使額は調整される」と思ってしまう仕掛けになっています。しかしながら実際には調整されず、
市場価格よりも約10倍もの安い値段(株価は10倍になっても行使額は22円のまま)で株を仕入れる事ができたのです。
もうちょっと言えば、新株予約権の個数も調整されていないので、
当初想定した10倍もの株式数の増加となり、恐ろしいほどの希釈化が発生します。
これは合法なの? という疑問も当然あるかと思いますが、定時株主総会で、株主併合、新株予約権 の両方を付議して可決しているので、会社としては何ら問題ないという立場のようです。
ここから学習できるのは、
「株式併合+新株予約権」のスキームが登場した時に、新株予約権の額面は、きちんと株式併合比率通りに調整することが確約されているのかをしっかりチェックしなさいという事です。
最近もこのスキームを採用した会社があります。優待銘柄として超有名な
タスコシステム(2709)です。株式併合は2/1日に効力が発生します。
株主総会や、
JASDAQでは、10株未満株主の株主喪失について問題視していますが、私が思うに本当の問題はそこにはありません。
新株予約権の額面をきちんと株式併合比率通りに調整するのか? にあります。
昨年末段階でタスコシステムの株価は3,450円。10対1の株式併合すれば、34,500円に該当します。もし額面が調整されなければ4,000円での発行となり、これが市場で売却されるとなると既存株主へのダメージは図り知れません。
もしタスコシステムの株式を所有している、もしくは今後買うつもりがあるのでしたら、
新株予約権の額面も併合比率に合わせて確実に調整されるのか、予約権の個数はどうなるのか(この数も変わらないと株数の増加は想定の10倍)、しっかりとチェックした方がいいと思います。
しかし、この仕組みを考え出した人はとても頭が切れる人ですね。今後、MSCBがなくなっても、今回のスキームが使えなくなったとしても、市場で資金を生み出す方法はいろいろと形を変えて登場するでしょう。「投資家はもっと勉強しないと、ずる賢い人にだまされてしまう」(By
ホリエモン) というのは真実をついているようです。
(2008/2/25 追記: タスコシステムはちゃんと行使価額、転換価額を調整したようですね。リリースが出ています)
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